双極性障害とは

双極性障害とは

誰にでも気分の浮き沈みというのはあるものですが、自分ではコントロールできないほどの激しくつらいうつ状態(うつ病相)と、ときには人間関係を壊してしまうほどの激しく高揚した状態となるそう状態(そう病相)とを繰り返すものを、そううつ病または双極性障害といいます。双極性障害は、そう状態の程度によって二つに分類されます。

家庭や仕事に重大な支障をきたし、入院が必要になるほどの激しい状態を「そう状態」といいます。一方で明らかに気分が高揚していて、睡眠時間がいつもより少なくても調子がよく、仕事もはかどるけれど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の状態を「軽そう状態」といいます。うつ状態に加え、激しいそう状態が起こる双極性障害を「双極I型障害」といい、うつ状態に加え、軽そう状態が起こる双極性障害を「双極II型障害」といいます。

双極性障害の男女差・有病率

うつ病の有病率はおよそ女性が男性の2倍と言われますが、双極性障害には明確な男女差は認められていません。患者数については、日本では人口の1%弱、欧米では人口の1-3%程といわれています。この差は、データの取り方や診断の仕方に起因する可能性も考えられます。また、大うつ病のうち一定の割合の方が後に双極性障害と診断されるため、実際には双極性障害の有病率はもっと高いとも言われます。

双極性障害の発症の原因・誘因と病前性格双極性障害の発症の原因・誘因と病前性格

双極性障害の原因は、まだ解明されていませんが、単極性のうつ病や他の精神の病気にくらべると、脳や遺伝子などの生物学的な要因と関係する度合いが強いと考えられています。 双極性障害になる人の病前性格として、「社交的で陽気、親切、ユーモアに富む」などの特質をもつ「循環気質」が知られていますが、中にはあてはまらない場合もあり、どんな性格の人でも発症する可能性があります。

発症の誘因としては、睡眠不足やストレス、種々のライフイベントなどがあげられますが、外部の因子以外に、各人の生物学的要因が大きく影響しています。従って双極性障害の場合には、精神療法やカウンセリングを補助的に併用しながら、薬物治療と環境調整を長期的に継続することが大切です。

双極性障害の発症の原因・誘因と病前性格

  • そう症状の例
    爽快な気分になる、次々にアイデアが出てくる、注意が散漫になり最後まで
     計画立てて物事をやり遂げられない。
    睡眠が極端に少なくても元気に活動し続ける、多弁、多動になる。
    社会的な逸脱行為がみられる、真夜中に知人に次々と電話を入れ話し続ける、借金を
     して多額の買い物をする、法的な問題をおこし社会的信用を失う、性的に奔放になる。
    → そう状態の時には周囲には多大な迷惑がかかりますが、本人は「気分が良い」と感じて困らないため、自ら受診を望む人はとても少ないものです。周囲がおかしいと気づいたら、早めに医療機関に相談しましょう。
  • うつ症状の例
    うつうつとした気分、集中力がない、判断できない、何をしても楽しくないし
     何にも興味がわかない。
    疲れやすい、1日中眠いまたは眠れなくなり朝早く起きる、イライラする、落ち着かず
     じっとしていられない、焦りが強い
    自分を責め自分には価値がないと感じる、死にたくなる
    → 「うつ」の状態は本人にとって非常につらいので、自ら受診を希望する気持ちになります。正しい診断がなされれば、より適格な薬物・環境調整が早期に開始されるので、その後の病状や生活も安定します。ですので受診する際には、今まで「うつ」以外に「そう」や「軽そう」のエピソードがなかったかどうか、今一度振り返ってみて医師に伝えましょう。

治療法

双極性障害の経過と非薬物的治療

双極性障害は、有効な治療法や対処法が比較的整っているため、本来は通院治療により十分にコントロールができるものです。

通常は、最初の病相(うつ状態あるいはそう状態)から次の病相までの間に、何の症状もない通常の気分でいられる期間があります。通常気分の間に薬を飲まないでいると、うつ病相とそう病相の間隔がだんだん短くなり、 しまいには急速交代型へと移行したり、薬が奏功しにくくなってしまうことがあります。再燃・再発を繰り返す間に、大切な人間関係、社会的信用、仕事や家庭など、人生の基盤に悪い影響を与えてしまうことがあるため、「うつ」でも「そう」でもない期間をなるべく長期間継続させることが必要です。

自分でできる対策としては、睡眠や生活の記録をつけてみて、極端な睡眠不足や過活動の時期があったら軽そう状態を疑ってみること、薬物やアルコール乱用などが抑うつ気分と関係していないか検証すること、ライフチャートをつけてみて、生活上の出来事がどのように気分や体調の上下に関係するのかを分析してみること、などがあります。この方法は、双極性障害と診断されていない人にとっても有効なやり方で、浮き沈みのある自分の生活のパターンを明確に把握してコントロールすることにつながります。

双極性障害の薬物治療

双極性障害には、気分安定薬と呼ばれる薬が有効です。日本で使用されている気分安定薬には、リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン、ラモトリギンがあります。そう状態、うつ状態の改善や予防のために服用します。その他、非定型抗精神病薬であるクエチアピン、オランザピン、アリピプラゾールなども有効です。

双極性障害では、薬物療法を長期的に継続して再発を抑えることが肝要ですから、万一にも服薬を中断してしまわないように、自分に合ったお薬を主治医と話し合って決めていく必要があります。のみにくい、副作用が心配という方はためらわずに相談をしてください。