不登校について
「朝になると腹痛や頭痛、めまいがでる」「学校にいくしたくをしてもいざ玄関を出ることができない」——このようなお子さんの様子に、心配や戸惑いを感じていませんか?不登校は特別なことではなく、誰にでも起こりうる問題です。文部科学省の調査では、小中学生の不登校児童生徒数は年々増加しており、めずらしいことではなくなっています。
不登校はわるくない
学校に行けないことは必ずしも治療すべきことや悪いことではありません。独自のルールや人間関係のある学校という場で、これまでお子さんは何度も傷つきながら適応しようと頑張ってきました。皆と同じように学校に行けない自分は悪い子だ、親に心配をかけて申し訳ない、そんな悩みを抱いている子もいることでしょう。
ケースバイケースではありますが、場合によっては、学校を休むことをお勧めすることもあります。まずはお子さんの心を休め、ゆっくりと元気を取り戻し、そして社会とのつながりを何らかの形で築いていくことを目指していきましょう。
以下に、不登校の定義と背景要因、注意すべきサインと対応法、治療法についてご紹介します。
不登校とは?
不登校とは、病気や経済的な理由を除いて、年間30日以上学校を欠席している状態を指します(文部科学省の定義)。
ただし学校に行きたくても行けない「登校しぶり」「年に10回程度、休んでしまう」などの段階からサインが出ているともいえ、サポートが必要なこともあります。
不登校の子どもたちは、「怠けている」「甘えている」と誤解されがちですが、多くの場合、心の中で葛藤しながらも学校に行けない状態に苦しんでいます。
不登校の主な背景要因
不登校の背景要因は1つではありません。よく見られる要因として以下のようなものがあります。
01. 学校でのストレス
いじめや友人関係のトラブル
担任や部活の先生との関係や学校・教室の雰囲気への不安
勉強についていけないことの悩みやプレッシャー
02. 家庭環境の影響
両親の不仲や離婚、DV,家庭内の深刻な葛藤
厳格すぎるしつけや過度な期待
03. 心身の不調・発達特性
うつ病や双極症、不安障害、統合失調症、などの心(脳)の病気
発達障害(ASDやADHD、学習障害)が背景にある場合
起立性調節障害(自律神経の乱れによる体調不良)が隠れている場合
04. 社会的な要因
インターネットやSNSによるストレス
ゲーム依存等による夜更かしや生活リズムの変化
不登校のサイン
不登校の兆候は、徐々に現れることが多いです。
以下のような変化が見られた場合、心(脳)疲労のサインとして表れている場合がありますので早めの対応が大切です。
- 朝になると、腹痛、頭痛、吐き気などの体調不良の症状がでる
- 登校を促すと「学校に行きたくない」と泣き出す
- 以前よりイライラしやすく元気がない
- 夜更かしや昼夜逆転の生活リズムになる
- 学校の話をせず、好きなことにだけ熱中する
不登校の対応法・治療法
家庭でできるサポート
不登校の子どもにとって、最も大切なのは「安心してエネルギーを補充できる基地」であることです。
以下にご家庭でできるサポートのポイントをご紹介します。
無理に登校を促さない
「頑張って学校に行かせる」という方針はたいていの場合は逆効果となります。無理矢理いかせると数日から数週間程度はもつかもしれませんが、いつか限界がきて心がさらに傷つき疲れてしまいます。本人の心に寄り添い、「行きたくない気持ち」を受け止めてあげましょう。
日常生活のリズムを整える
完全な昼夜逆転を防ぐため、起床や就寝時間を少しずつ調整します。朝日を浴びることや軽い運動も効果的です。
気持ちを話せる環境を作る
無理に話を聞き出すのではなく、子どもが自分から話せるタイミングを待ちましょう。「どんな気持ちだった?」とやさしく問いかけることも有効です。
「好きなこと」を大切にする
ゲームや趣味など、子どもが楽しいと感じることに取り組む時間も大切です。成功体験を積むことで、自信を取り戻すきっかけになります。
クリニックでできるサポート
01. 支持的心理療法 (原則的に高校生以上)
公認心理師(臨床心理士)が、子どもの気持ちに寄り添いながら、日常生活の話や好きなことについて、面談を重ねながら話してもらいます。次第に信頼関係が深まると、悩んでいることについて打ち明けたり、相談したりできるようになります。大人と違ってまだ人格形成の途中ですので、心の奥底まで無理にあけることはせず、
#一定の言語化能力があり、自ら心理療法を希望する場合に行うことができます。予めご了承ください。
02. 発達・心理検査(WISC・WAISなど)
医師から必要と判断された場合には、発達障害や学習障害、うつ症状などが不登校の背景にないかを調べるため、心理検査を行います。
03. 生活リズムの改善指導
現在の睡眠や生活のリズムがどうなっているのか、記録してもらい一緒に検証していきます。適切な生活のリズムを保つこと、決まった時刻に入眠して決まった時刻に起床できること、は心身の安定を保つために非常に重要です。寄り添いながら、習慣化できるまで指導していきます。
04. 薬物療法
不眠や不安、睡眠覚醒リズムの乱れ、気分の波、などが持続している場合は、症状に応じたお薬の服薬が必要となることもあります。
当院ではお子さんでものみやすい漢方も扱っております。また西洋薬を使う場合にも、よく相談しながら少量から副作用に細心の注意をはらって使用致しますのでご安心ください。
05. 家族支援
親御さん(特にお母様)の中には、ママ友や実母にも相談できずにお子さんの悩みを1人で抱え、自分を責めたり不安感が強くなって生活にも支障をきたしてしまう方もおられます。
このような時には、まずは親御さんご自身が受診したりカウンセリングを受けてみることが、お子さんの症状を改善するための近道であったりします。
医師や経験ある心理士から色々なアドバイスや新たな視点をもらい、ご自身が癒やされ元気になると、不思議と家庭やお子さんにも活気が戻ってくるものです。
当院では親御さんへのサポートも行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
#親御さんのカルテを作成させていただきます。
まとめ|不登校でも大丈夫。ひとりで悩まないで
不登校は決して「甘え」や「怠け」ではありません。お子さんが自分なりにSOSを出しているサインです。ご家族だけで抱え込まず、専門家のサポートを受けることで、子どもの気持ちや状況に合った解決の糸口が見つかることがあります。
「そのうち行けるようになるだろう」としばらく様子を見ているうちに、お子さんの生活リズムがさらに乱れ、親御さんのメンタルも悪化してしまうことがあります。
早めに相談することで、お子さんや親御さんの負担を軽くすることができます。
当院では不登校のご相談や診断・治療も積極的に行っています。お気軽にご相談くださいね。