心身症とは
心身症とは、身体の病気や症状のうち、その発症や経過に心理社会的ストレスが関わっている身体疾患をさします。
当初の近代西洋学では心と体の症状を別々に扱っていましたが、実は心身の病気には深い関連があり、ストレスが強く影響していることが次第にわかってきました。
初めて「心身症」という名前が使われたのは18世紀のドイツで、哲学と医学の融合による全人的医療が提唱・実践されていたことに由来します。
「心身症」の治療においては、患者さんを心身両面から全人的に捉えて、その方の心理・社会的なストレスとの付き合い方も含めて、一緒に考えていきます。
心身症の疾患について
多系統の疾患がありますが、代表的なものとして下記があげられます。
消化器系:過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア
循環器系:白衣高血圧、仮面高血圧
呼吸器系:気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患
内分泌系:糖尿病、バセドウ病
疼痛系:慢性疼痛、線維筋痛症
皮膚系:アトピー性皮膚炎、
神経内科系:頭痛(緊張性頭痛、偏頭痛)
摂食障害:拒食症、過食症
心身症と関係のある自律神経症状について
以下の症状が心身症の症状としてよくみられます。
- 動機、胸痛、息苦しさ
- 吐き気や下痢、便秘
- 頭痛、眼の疲れ
- めまい、てちくらみ
- 喉の違和感、のみこみづらい
- 全身の痛みやしびれ、冷え、ほてり、発汗
- 肩こり、頭痛、脱力感
- 倦怠感、易疲労、食欲低下
- 不安や落ち込み、イライラ、気力や集中力の低下
心身症の鑑別
心身症の種類はとても多く、一見すると純粋な体の病気に見え、精神的ストレスが関わっているとわからないこともあります。
当初は内科や脳神経内科などを受診して様々な検査をするものの異常がないため、心療内科や精神科の受診に至ることも多いです。
心身症とストレスとの関連について
以下の点にあてはまる場合には、心身症である可能性があります。
- 内科で血液検査やレントゲン、エコーやMRI、など種々の検査をしたが、全て異常がないと言われた
- 糖尿病や高血圧において、指導の通りに治療を行っているのに症状が改善しない、または症状に波がある。その波はストレスに左右される。
- 頭痛や腹痛、胃痛が続き、ストレスが強まると症状も悪化する。
- 大きな生活・仕事上の変化があったタイミングで、一度良くなった身体症状が悪化した。
- まじめで、何でも一人で抱え込み頑張ってしまう性格である。
- 手を抜いたり遊んだりすることに、罪悪感を感じてしまいストレス発散できない
心身症の治療法
心身症の治療とは、身体面の治療と精神面の治療とを両面から行う必要があります。
心療内科・精神科では下記のような治療を行います。
01.環境調整
心理社会的ストレスへの対応は治療の重要な一部です。心身症の発症や増悪のきっかけとなったストレスが何であるのか、時に患者さんが自覚していないこともありますので、ストレス因子を見極めて、負荷を軽減するような環境調整を行います。
02.睡眠習慣の改善
良質の十分な睡眠をとることは、心身症の発症や増悪を防いでくれます。PCやスマホは就寝の1時間前にはやめて、自然な眠りに入れるように睡眠環境を整えましょう。また入眠前の飲酒も控えることをおすすめします。かえって睡眠の質が悪化しかねませんし、アルコール依存や肝機能障害のリスクも伴うからです。
03.適度な運動をすること
適度な運動は、心身症の症状を軽くしてくれる作用があります。気分が晴れやかになり、心身がリラックスします。また、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスを整えてくれるため、気分が穏やかになり気力や意欲が向上します。
例えば、朝の散歩やヨガやストレッチなどは気軽にとりくめますのでおすすめの方法です。
04.心理療法
呼吸法やリラグゼーション法、マインドフルネス瞑想は気軽にできて一定の効果があるでしょう。また認知行動療法や支持的なカウンセリングなどを一定期間行うことも有効です。ただし適応となる場合とそうでない場合がありますので、症状の重症度やご希望などを総合的に考慮して決めます。
05.薬物治療
不安・動機、イライラや焦燥感、倦怠感や意欲低下、などの症状に合わせて、漢方や抗不安薬、時には軽めの抗うつ剤、などを使用するのが効果的です。
薬物を使う際には主治医とよく相談して、その効果と副作用の可能性について説明を受け納得した上で、前向きな気持ちで服用することが、より良い治療効果を生みます。
当院では心身症のご相談や治療も積極的に行っています。お気軽にご相談くださいね。