近年、職場のストレスや個人の特性により職場での不調を感じる方が増えています。
職場での心身の不調を放置すると、様々な悪影響を及ぼしますから、いたずらに様子をみるのではなく、上司や周囲の信頼できる人に相談をする、などして早めの対策をうつことが肝要です。
対策を打ったにもかかわらずまだ不調が続く時には、早期発見・治療の観点から心療内科や精神科を受診して専門家の意見を聞いてみることも考えてみると良いでしょう。
職場のメンタルヘルス:よくみられる症状
様々な症状がありますが、例えば下記のような症状がよく認められます。
- 朝の気分悪化、倦怠感が出現する。
- 遅刻や欠勤が増加する
- 集中力が続かない、ミスが増える
- 食欲が減る、体重が減る、甘い物や炭水化物を過食してしまう
- 飲酒量が増える、休日は朝から飲酒する
- 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、熟眠感がない
- 好きだったことに興味が持てなくなる
- 怒りっぽくなったり、涙もろくなる
職場でメンタルダウンがみられる背景要因
背景要因がなく発症することもありますが、背後に何らかの要因が隠れていることも少なくありません。
下記に良くみられるストレス要因をあげます。
職場ストレス
- 異動や人手不足により慣れない業務に従事せざるを得ない
- 能力を超えた過大なタスクが割り当てられる
- 昇進してより重い責任と課題が課される
- 昼夜のリズムがずれやすいシフト勤務に従事している
個人の要因と職場環境が合わさったもの
- 背景にADHDやASDなどの特性を持っており、得意なことと不得意なことの凹凸があるものの、自分で気づいていない、または上司や同僚に伝えられていない、などから適切な配慮をされていない。
- 元々まじめな性格であり、与えられた業務を完璧にこなそうとする。過剰適応気味である。
- 元々うつ症状や不安症、不眠症などで通院しており、継続的な通院や服薬が必要であるののの、忙しいことを理由に治療を中断してしまい症状が悪化している
- プライベートにおいて結婚や離婚、出産や子育てなどの、個人のリソースを大きく必要とする出来事があったが、職場の業務量の調整ができていない。
職場のメンタルヘルスの悪化が引き起こす組織への悪影響
メンタルヘルスの悪化は、個人の問題にとどまりません。従業員・会社双方に悪影響をもたらします。以下に、従業員および職場に及ぼす悪影響の例を記載します。
職場におけるメンタルヘルスの悪影響の例
従業員
- 遅刻や欠勤が増加する
- 勤務に対するモチベーションが低下する
- 集中力が低下し、ミスやケガ、顧客のクレームが発生する
- 休職や離職につながる
会社
- 生産性が低下する
- 人手不足になる、仕事が回らなくなる
- 組織全体のモチベーションが低下する
- 営業成績が下がり職員の待遇改善ができなくなる
- 人が集まらなくなり負のスパイラルに陥る
- 企業イメージが低下する
職場のメンタルヘルスの悪化への対応方法
職場のメンタルヘルスの問題を放置することは、従業員にとっても企業にとっても、良い方策とはいえません。
以下に、各々の立場からできる対策をあげます。
従業員
01. 心身の声に耳をかたむける
ストレスが続くときは、たいてい何らかの変化が心身に起こるものです。
- 朝起きたときの調子がなんだかいつもと違う
- 大好きなメニューが美味しいと感じなくなった
- 寝付くのに時間がかかる、早く起きてしまう
などの変化が起きたら、それは心身の不調が始まっているサインかもしれません。
そんな時に背景にもし思い当たるストレス要因がある場合には、早めに環境調整を心がけましょう。
02. セルフケアを心がける
自分の心身の調子を整える方法をいくつか持っておき、日々すこしの時間をみつけて実践してみましょう。
例えば以下のようなセルフケア方法があります。
- 出勤前のひととき、朝の光をあびながら散歩をする。
- 朝や晩に10分程の時間をとり、マインドフル瞑想や呼吸法を行う。
- オフィスワークの合間にストレッチをする。
- ぬるめの温度でゆったりと入浴し、手足のマッサージをする。
03. 周囲の人に相談する。
不安な事やつらい事は、自分1人で抱え込まずに早めに周囲の人に相談しましょう。
困り事を言語化することで新たにみえてくる事もあります。
話をきいてもらうだけで楽になることもあるでしょう。
信頼できる上司がいれば、ぜひ定期的に面談をしてもらい必要に応じて環境調整も依頼してみましょう。
04. 専門科の意見を聞く
それでも心身の不調が続く時は、早めに受診して、一度専門家の意見をきいてみることもお勧めです。
自分の状態を客観的に知り、今すべきことやしなくても良いこと、家族や上司に気をつけてもらうべきこと、などのアドバイスを得られるでしょう。
ある程度症状が進んでいるときは、漢方や少量の西洋薬などのお薬による治療が望ましい場合もあるかもしれません。
いずれにしても、主治医とよく相談して、理解・納得した上で最もよい方法を一緒に考えていきましょう。
当院では職場のメンタルヘルスのご相談や治療も積極的に行っています。お気軽にご相談くださいね。