Dr'sコラム

うつ病治療のゴールと治療期間について〜その1

皆様こんにちは。南浦和駅前町田クリニックです。

今回は寛解した際の薬物の維持療法について考えてみたいと思います。治療が進んできた時に皆様からよくいただくご質問の1つとして、「症状がだいぶよくなってきてそろそろ職場復帰も考え始めたのですが、治療はいつまで継続するのですか?」というものがあります。

さてうつ病の薬物療法の観点からは、初発エピソードの方は寛解してから少なくとも半年程度は完全寛解に達した時と同じ用量で維持するべきということが言われており、これは再発に関する様々なエビデンスを元に作られた世界標準です。

うつ病の治療目標は寛解を維持して元通りの機能レベルを保つことですが、初回のうつ病エピソードの再発率はおおよそ50%から85%位と比較的高く、再発の回数を重ねるほど完全寛解に到達しにくくなる(完全に治らず症状が一部残ってしまう)ことが知られていますので、「いかに再発を防ぐか」に主眼をおくことが人生の質を高めると考えられます。

「少なくとも半年継続」と聞くと皆様の中には「思っていたより長いなあ。どうしてそんなに長い期間服用しなければいけないの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。それにはうつ病が高血圧や糖尿病のような多因子遺伝の慢性疾患であることや、抗うつ剤が人の体の中で何段階もの作用機序を介してゆっくり効果を出すこと、環境調整や生活行動習慣を改善するのに時間がかかること、等も関係していると考えられます。早く薬をやめたい、とつい気持ちがせいてしまうこともあるかと思いますが、減薬については主治医と相談しながら計画的に行っていきましょう。