パニック障害とは
パニック障害は、特別な理由もないのに急に強い不安や動悸、発汗などの自律神経症状を主としたパニック発作をおこす病気です。
何度も繰り返されるため、「あの発作がまた起こったら・・・」という予期不安にいっそう苦しられるようになります。
パニック発作の症状 ~こんな症状はありますか?
- このまま死んでしまうのではないかという強い恐怖、不安感
- 手足のふるえ、しびれ、冷や汗、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気
- 自分が自分でなくなってしまうような感覚
予期不安の症状が強くなると、発作を恐れて外出できなくなったり、すぐに逃げ出せないような閉所を避けるようになります。
このような症状を「広場恐怖」と言います。パニック発作を経験した人が避けたくなる場所として以下のようなものがあります。
- 駅と駅の間隔が長い電車やバス、高速道路
- 手足のふるえ、しびれ、冷や汗、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気
- 自分が自分でなくなってしまうような感覚
パニック障害の治療
パニック発作のおこる状況は人により少しずつ異なりますが、いずれも脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることが原因の一つと考えられます。発作をおこしやすい状況を整理・把握したり、お薬により発作がおこりにくい状態に調整したりします。
そしてパニック発作をできるだけ事前に防ぐことで、生活全般のコントロール感覚を取り戻していきます。パニック障害の治療薬として日本で最もよく使われているのはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)です。治療初期の発作が強い時期にはベンゾジアゼピン系といわれる抗不安薬も補助的に使います。
パニック発作が起こらなくなったら、今まで避けていた状況や場所に徐々に挑戦していく練習をしていきます。
社交不安障害とは
大勢の人の前で話す、会議でプレゼンをする、上司やあまり親しくない人と1対1で会話をする、面接を受ける、人前で字をかく、お茶を出す・・こんなときに必要以上に緊張してしまい、手が震えたり冷や汗をかいたりします。その症状が人に気づかれないかと心配になり、人前で上述の行為をすること避け、時にはひきこもるようになります。
社交不安障害は、その人が毎日の生活の中で不安や恐怖を感じている状況になると、こころやからだにいろいろな症状があらわれる病気です。 社交不安障害の患者さんで最も多い悩みが、1対1で人と接するときに必要以上に緊張してしまうことです。次に多いのが人前で何かをすることへの強い不安です。これは、字を書く、話すといった多くの人にとってはごく当たり前の動作が、社交不安障害の人では極度の緊張や不安感から手が震えたりします。そして、その手の震えを他人に気づかれないかと心配になり、人前でこのような行為をすることを避けるようになります。
心理的症状
人前でパニックになってしまうのでは、恥をかかないか、などと心配になります。
身体的症状
手足の震え、顔の発赤、冷や汗、声が出ない、息苦しさ、動悸、めまい、吐き気。
社交不安障害の治療方法
社交不安障害の原因にも、脳内の神経伝達物質の機能異常がかかわっていると考えられています。
それらを調整する薬物治療も、心理療法もともに効果があります。
信頼できる医師と相談しながら、その方をとりまく状況も考慮にいれて最適な組み合わせで治療を行います。
強迫性障害とは
強迫性障害では、自分でもばかばかしいとわかっていながら、ある考えが頭から離れない、同じ確認をくりかえしてしまうものです。「強迫観念」とは、頭から離れない考えのことで、その内容が「不合理」だとわかっていても考えてしまいます。「強迫行為」とは、強迫観念から生まれた不安にかきたてられて行う行為のことで、やりすぎで無意味と自分でわかっていてもやめられません。
強迫観念や強迫行為があると日常生活上の機能障害をひきおこします。全人口のうち強迫性障害の人は50~100人に一人の割合で、心療内科・精神科外来の中では4%前後といわれています。
代表的な強迫観念と強迫行為
不潔恐怖と洗浄
汚れや細菌汚染の恐怖から過剰に手洗い、入浴、洗濯をくりかえすドアノブや手すりなど不潔だと感じるものを恐れて、さわれない。
加害恐怖
誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認する。
確認行為
戸締まり、ガス栓、電気器具のスイッチを過剰に確認する。
儀式行為
自分の決めた手順でものごとを行なわないと、恐ろしいことが起きるという不安から、どんなときも同じ方法で仕事や家事をしなくてはならない。
数字へのこだわり
不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
物の配置、対称性などへのこだわり
物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。
日常生活への支障がでていたら、受診のサインです。
次のようなサインがあれば、信頼できる専門医に相談してみましょう。
日常生活、社会生活に影響が出ている
手洗いや戸締まり、火の元の確認に時間をとられて学校や仕事に遅刻してしまう、日々の強迫思考や強迫行為にエネルギーをかけすぎて心身が消耗してしまうことがあります。
家族や周囲の人が困っている
火や戸締まりの確認を家族にも頼んだり、アルコール消毒を強要するなど、周囲の人を強迫観念に巻き込むことも多くなります。その結果人間関係がうまくいかなくなっていきます。引きこもりの若者が母親を巻き込んでしまうことも多いです。
強迫性障害の治療法
認知行動療法
「曝露反応妨害法」が代表的な治療法で再発予防効果が高いです。たとえば、汚いと思うものをさわって手を洗わないで我慢する、留守宅が心配でも鍵をかけて外出し、施錠を確認するために戻らないで我慢する、などの「抵抗」を続けていくと、強い不安が弱くなっていき、やがて強迫行為をしなくても大丈夫になっていきます。
薬による治療
代表的なものはSSRIですが、その症状や程度により使い分けると良いでしょう。
下記に1つずつ説明いたしますのでご参考にしてください。
1SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
社抗不安障害の一因として、脳内シナプス間隙のセロトニンが枯渇していることがわかっています。SSRIを服用すると脳内のセロトニンが増え、社交不安がおきにくい状態となり、今まで避けていた社交的場面にも出られるようになります。
2SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
社会不安が長引くと、二次的に不安や抑うつ、不眠、といった症状が引き起こされ、生活や仕事に支障をきたしてしまいます。SNRIは、社交不安を引き起こす脳内セロトニン不足を改善するだけでなく、うつ症状を引き起こす脳内ノルアドレナリン不足も改善してくれます。これにより、生活や仕事のQOLが高まります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
社会的状況では強い不安、緊張がおこり、二次的に手足のふるえや下痢などの身体症状もひきおこされるため、大切な発表や会議の場で上手にふるまえるかどうかと心配になることもあるでしょう。そこで、事前にベンゾジアゼピン系抗不安薬を屯服しておくと、一時的に不安や緊張が和らぎ、大事な場面で不安発作などが出ることを防げます。
βブロッカー
人前での発表時などの社交的状況において、手足のふるえや動悸などの自律神経症状が出ることを緩和/防止してくれます。状況に合わせて頓服すると有効なことが多いです。
お薬は、うまく使うと症状が長引かずに短期間で改善しますし、二次的なうつ症状の出現も防いでくれます。各人の状況により必要性や服薬するタイミングや用量、使用期間が異なりますので、主治医とよく相談してみてくださいね。