睡眠障害
「夜更かしが増えてきた」「朝おきられず遅刻してしまう」「日中の集中力が続かない」「授業中に居眠りする」
——お子さんのこんな様子に心配を感じていませんか?
睡眠は心身の成長にとって大切な要素です。睡眠の問題の背景には、発達障害やうつ病などの疾患が隠れていることがあります。
また学校で何らかのトラブルがあるサインかもしれません。
睡眠の障害が長引くと、集中力の低下や成績不振、情緒不安定や気分の波、などさまざまな問題を引き起こしますので、早めの対処が必要と言えるでしょう。
子どもの睡眠障害の症状
当クリニックの児童思春期外来では、下記について、医学的な観点から診断・治療を行っています。
01. 子どもの睡眠覚醒リズム障害 (夜型睡眠)
子どもの睡眠覚醒リズム障害とは?
人は、本来は一日25時間の日内リズムをもっていると言われています。つまり学校や社会的な活動の場を持たずに放っておかれると、次第に1時間ずつずれ、どんな子どもでも夜型になってしまうということです。そのリズムを、食事や光、学校生活、などの外界からの刺激を浴びることで24時間に調整している、というワケです。
ところが24時間のリズムの生活リズムを保つことは、思春期の子ども達にはなかなか難しいことなのです。
「スマホのゲームをやるうちについつい夜更かし」「朝の目覚ましをかけても起きられない」「遅く起きた日には早く寝付けないのでさらに夜更かしする」となり、「昼夜のリズムがずれてついに昼夜逆転」となることも少なくありません。
睡眠リズム障害を放置すると、不登校、不安症状やうつ状態などの病にもつながることがありますので、早めの対処が必要です。
子どもの睡眠覚醒リズム障害 の治療法
・睡眠覚醒リズムの確認
診察ではまず、睡眠票を用いて、1日24時間の様子を確認することから始めることも多いです。入眠・起床時刻や食事の時刻、日中の活動度について記録していただき、毎回の受診で確認します。
・睡眠・生活習慣の改善指導
睡眠覚醒リズムがおおよそ把握できたら、睡眠衛生に関する改善にとりくみます。朝に気持ち良く起きられる工夫として、寝室のカーテンを開けて眠ることで朝の光を取り込む、光や音が出る目覚ましを使う、朝は窓ガラスを開けて換気する、なども良い方法です。診察ではお子さんの気持ちによりそいながら、適切な睡眠覚醒リズムの確立をめざして伴奏いたします。
・薬物治療
上記の方法でも適切な睡眠覚醒リズムが取り戻せない場合は、一定期間の薬物治療を検討しても良いでしょう。よく相談した上で、お子さんや親御さんのご希望に添う方法で、漢方や依存性・耐性の問題の少ないお薬を少量だけ使用します。結果的に早期に正しい睡眠覚醒リズムが確立されると、不登校や学業の遅れも早期に解決し、お子さんの自己肯定感の低下を防ぐことにもつながります。
02. ADHDやASDなどの神経発達症 (発達障害)
ASD(自閉スペクトラム症)と睡眠障害の関係とは?
ASDの子どもは、感覚過敏や対人コミュニケーションの困難などの特性があります。このことから、学校での人間関係のストレスから強い不安を感じたり、夕方から夜にかけて気持ちを切り替えることが難しく、結果的にスムーズに入眠できないことがあります。
一旦寝付いても、中途覚醒、早朝覚醒、あるいは夜驚症などがおきる場合もあります。
睡眠不足や熟眠障害が一定期間続くと、日中の眠気や注意力・記憶力の低下、あるいは情動不安定や易怒性・攻撃性(切れやすさ)にも繋がるため、昼間の問題行動が増え、さらに睡眠障害が悪化してしまうことがあります。
ADHD(注意欠陥多動性障害)と睡眠障害の関係とは?
注意欠陥・多動性障害は、集中力を持続できない、忘れ物やミスが多いなどの「不注意」と、落ち着かない、待てない、などの「多動・衝動性」とを特徴とした「生まれつきの特性」であり、18歳以下の約5%に見られると報告されています。ADHDと睡眠障害の関係性は非常に高く、ADHDのある子どもの5割から8割に睡眠障害が併存するとも言われます。比較的よくみられる症状には、下記のようなものがあります。
- 朝決まった時間に起きられない
- 学校に遅刻する、欠席する
- 授業中に寝てしまう(特に退屈な授業で)
- ゲームやスマホをやめられず、夜更かしをする
ADHDの子どもの睡眠障害は、遅刻や欠席、不登校や学業面での遅れ、などに繋がるため、人生を左右する一大事ともいえ、早期に気づき治療することが望ましいでしょう。
子どものASD,ADHDに伴う睡眠障害の治療法
■非薬物的治療法
睡眠覚醒リズムの確認や、睡眠リズム指導は、まず行うべきものです。但しADHDやASDをもつお子さんは、生まれつきの特性を備えていることもあり、非薬物治療だけでは十分な改善がみられないこともあります。
■薬物治療(ADHDに伴う睡眠障害)
①メラトニン(メラトベル)、ラメルテオン(ロゼレム)ラトニン受容体作動薬
メラトニンやメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)などのお薬は、依存性や耐性がなく、睡眠覚醒リズムや睡眠の質を自然な形で無理なく改善してくれます。
適切な時間に入眠し、熟眠して朝すっきりと起きられれば、学校の遅刻や欠席も減り、元通りに学校に通うことができるようになるでしょう。
副作用も少ないため、一般的に薬物治療を検討する際の第一選択薬と言えるでしょう。
②ADHD薬
ADHDの特性そのものに奏功するお薬には、下記があります。
- アトモキセチン(ストラテラ)
- メチルフェニデート(コンサータ)
- リスデキサンフェタミンメシル酸塩(ビバンセ)
- グアンファシン塩酸塩(インチュニブ)
これらのお薬は、上手につかうと睡眠覚醒リズムを改善してくれるばかりではなく、「不注意」「多動・衝動性」といった症状も改善してくれるため、生活態度や学業成績にも良い影響がみられます。
睡眠障害やADHD特性が強い場合には、成績不振から受験の心配が増したり、友達との関係性に支障が出て不登校に陥ってしまうこともあります。早期治療により学校生活の質が格段に高まる場合もありますので、早めの受診を検討してみるのも良いでしょう。
なお服用期間について心配される声をよくお聞きします。迷っている場合には、長期休暇中に一度やめてみて、その影響を確かめる方法もあります。
いずれにしても主治医とよく相談し、ADHDの特性や睡眠障害の程度と、学校生活や勉強にどの程度支障をきたしているのか、また服用を継続することへの心理的負担感、などを総合的に考えて、最終的にはお子さんと親御さんが納得する形で決めるのが望ましいでしょう。
当院では子どもの睡眠障害のご相談や診断・治療も積極的に行っています。お気軽にご相談くださいね。